医師が復職先を探すポイントとは?不安解消してキャリアを積むために

医師免許があれば、どんなにブランクがあっても復職できます。
しかしそれは制度上の問題がないというだけであり、実際にブランクを抱えた医師が復職をしようとするといくつかのハードルがあります。
ブランクのある医師が復職をする際には、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか。
納得のいく復職先を探すには、どのような点を意識すればいいのでしょうか。
復職を前に不安を抱えている方もいるかもしれませんが、ポイントを理解すれば復職先選びが少し楽になるかもしれません。
自分に合う復職先を探せるよう、新しい働き方を検討していきましょう。
医師の経歴にブランクが生じる理由
医師としての経歴にブランクが生じる理由は、いくつかあります。
誰にでも離職・退職のタイミングが訪れる可能性があるでしょう。
よくある理由には、以下のような項目があります。
妊娠・出産によるライフスタイルの変化
結婚や妊娠・出産は、女性にとって人生の大きなイベントとなります。
ライフスタイルの変化が訪れる時期であり、特に勤務時間が長い医師という仕事の特性上、多くの人が悩みを抱えるでしょう。
育休を取得する場合もあるでしょうし、退職を選ぶ場合もあるでしょう。
子供の成長につれて、乳幼児期が終われば学童期と新たな変化に対応し続けなければいけません。
キャリアのために早期復職を目指すケースが多いですが、家事や育児と仕事の両立は難しいと感じる人も少なくないようです。
家族の介護が必要になったから
家族の介護が必要になると、今まで通りの働き方が難しくなるケースもあるでしょう。
医師という職業柄、「家族であれば自分で診たい」という気持ちが強くなるのも無理はありません。
家族の要介護度・要支援度に合わせて働き方を相談するという場合もあるでしょうし、離職を余儀なくされるという場合もあるでしょう。
介護の場合は子育てと違って見通しが立ちにくいので、長期間のブランクができてしまう可能性もあります。
「介護対象者の緊急性が低くなった」「病状が落ち着いた」というタイミングで、無理のない復職先を検討するという選択肢もあります。
病気や怪我による長期療養
自身の病気や怪我といった理由で、長期療養が必要になる場合もあります。
不調の内容にもよりますが、今まで通りの働き方が難しくなり、離職や休職という選択をするかもしれません。
病気や怪我といった体調不良の際の復職で気を付けたいのが、復帰の時期です。
例えば、目に見えない精神的な不調を抱えているのに、早すぎる復職に踏み切ってしまうと症状を悪化させてしまうかもしれません。
復職のタイミングや働き方を丁寧に検討していきましょう。
留学や研究に専念するため
「語学留学のため海外に行く」「研究に専念したいから」という理由で、離職をする医師もいます。
語学留学であれば期間が決まっているので、比較的、復職の時期の見通しが立ちやすいです。
研究にキャリアチェンジさせようとしているのであれば、臨床医への復帰は考えていない方もいるかもしれません。
しかし現実的に収入面ややりがいという側面から、「やっぱり復職したい」と方向転換するケースもあります。
異業種への転職
医師とはまったく異なる仕事へ転職した後、また医師として復職をするケースもあります。
インターネットの普及により医師の働き方も多様化しており、起業をする方もいます。
しかし全ての人が必ず成功するわけではなく、復職を検討するという場合もあります。
日本の医師免許は一度取得すれば、知識や技術レベルが問われることなく一生有効なので、いつでも医師としての復職が可能です。
医師が復職する際の問題
医師としてブランクがあると、復職の際に不安を感じてしまうでしょう。
復職の際に問題となる具体的な内容を集めました。
知識・技術に遅れが生じる
医療の技術は常に更新されており、医師としても日々勉強が欠かせません。
新たな論文や新技術の発表、感染症流行の対応など、
最新知識を得る努力をしていかねばなりません。
臨床の現場から離れていると、このような情報の更新が難しくなりますので、即戦力としての復帰は難しいかもしれません。
時代遅れの常識のままでいる自分自身に気付く前に、
学び直す必要があるかもしれません。
手術の腕が鈍る
外科手術などの手技を伴う場合には、ブランクによって腕が鈍ってしまうのも懸念点のひとつです。
キャリアがあったとしても、ブランクがある場合は、
新しい知識を貪欲に吸収していく姿勢が求められます。
感が鈍っているという自覚がなくても、バリバリ現役で働いていた頃のようなイメージ通りにはいかないものです。
復職してから「こんなはずじゃなかった」と落ち込むより、「現役の頃よりも衰えていて当然だ」という気持ちを持っていた方がいいかもしれません。
復職先の選択肢が狭くなる
ブランクが長くなると、復職の際には指導医をつけるといったサポートがある医療機関もあります。
医師はそもそも人出不足であり、復職してもらいたい気持ちはあるものの、リソースを割いてまでブランクのある医師を雇うのが困難であるという医療機関があるのも現実です。
一方で、例えば地方独立行政法人東京都立病院機構のように、復職支援プログラムが充実している場合もあります。
オーダーメイド型の復職支援研修「東京医師アカデミー・復職支援プログラム」として、本人の希望に沿った研修を受けられます。
このようにサポート体制が整っている医療機関がありますが、一度離職すると復職先の選択肢が狭くなってしまうのは事実です。
家庭との両立が難しい
復職をすると知識や技術の遅れを取り戻しながら、新しい環境での仕事をスタートさせます。
子育てをしながら、介護をしながら、または自分の体調と相談しながら、といった理由を抱えながら仕事を両立させるのは、想像以上の負担になるかもしれません。
タイムスケジュールやメンタル的に、どのような働き方なら負担を最小限に抑えられるかを検討しておきましょう。
全てを完璧にしようとすると自分自身を追い込んでしまう危険がありますので、家族のサポートをお願いしておくなど、プライベートな部分でのフォローも備えておきましょう。
医師が復職する時のポイント
長期間のブランクがあると復職をするのは不安を感じるかもしれませんが、復職後でも活躍している医師はいます。
医師が復職をする際には、どんなポイントを意識すると無理なく働けるのでしょうか。
ブランクOKの求人を探す
即戦力となる医師ばかりではなく、「ブランクOK」という求人を出している医療機関もあります。
慢性的な人手不足が続いていますので、ブランクがあったとしても今後長く働ける人であれば受け入れてもらえる場合もあります。
ブランクがあると採用で不利になってしまうかと心配する人もいるかもしれませんが、「ブランクOK」であれば、安心して応募できます。
またブランクOKと記載している医療機関は、復職時の研修や指導医といったサポート体制が整っている場合も多いです。
自分の中で優先順位を決める
復職をするにあたって、自分の中で必ず譲れない条件が何かを考えておきましょう。
条件が良い職場がいくつか見つかるかもしれませんが、全てを満たした復職先を求めていると、なかなか決められなくなってしまうからです。
家計のための復職なのか、子育てをしながらなのか、キャリアのためなのか、という目的が自分の中で明確になっていると、仕事探しがスムーズになります。
- 長時間労働がない職場がいい
- 休日は固定であってほしい
- 宿直は難しい
このような優先順位の高い希望を出しておけば、復職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔せずに働けるでしょう。
非常勤やスポットを活用する
例えば子育てをしながら働くとなると、フルタイムで働くのは難しいでしょう。
また自分自身も新しい環境で長時間働くのは負担に感じるという場合には、非常勤やスポットでの勤務も視野に入れてみましょう。
常勤医だと週5勤務や当直、オンコールへの対応が求められますので、ブランク明けではライフワークバランスがとれなくなってしまう可能性があります。
常勤医にこだわらない形は、焦らずにブランクを埋めていける働き方のひとつといえます。
勘を取り戻したり、最新の知識を吸収していく時間がとれるので、心身ともに負担をかけずに復職できます。
女性医師離職防止・復職支援事業を活用する
医師国家試験の合格者に占める女性の割合は約3分の1となっており、女性医師が増加傾向にあります。
そこで女性医師の離職防止を厚生労働省が支援する事業があります。
女性医師離職防止・復職支援として、以下のような事業をご紹介します。
女性医師等就労支援事業
女性医師は、男性医師と比較すると復職が困難になる傾向があります。
乳幼児の子育てや、パートナーの転勤などの理由が背景にあるようです。
女性医師の復職のための支援事業として、自治体に受付相談窓口を設置しています。
- 復職のための研修受入
- 医療機関の紹介
- 家庭と仕事両立を支援するための助言
- 就労環境の改善
このように女性医師をサポートし、必要があれば必要な経費の補助も行っています。
女性医師支援センター事業
女性医師支援センター事業とは、パートタイムなど女性が働きやすいよう職業斡旋をする事業です。
日本医師会に委託された事業で、女性医師バンク事業として女性ドクターと医療機関をつなぎます。
ライフステージの変化に応じて、柔軟な働き方ができるよう女性を支援してくれます。
病院内保育所事業
院内保育所とは、院内で働く医師や看護師のために、
院内もしくは病院に併設された保育所です。
一般の保育園との違いは、預かり時間が長く、夜勤に対応するため夜間保育を行う場合もあるという点です。
女性医師の離職防止・再就職支援の際に、病院内保育所がある医療機関は候補のひとつとなるでしょう。
新たな専門分野も視野に入れる
医師として復職したいと考えた時に、最初にイメージするのは離職前と同じ診療科で働く姿でしょう。
今まで培ってきた技術や知識、経験を活かせる場となりますが、その診療科だけに固執してしまうと復職先の選択肢を自分自身で狭めてしまいます。
新しい業務内容にも視野を広げて、離職前とは異なる分野も考えてみましょう。
例えば、離職前は急性期病院で手術をこなしていた外科医であれば、慢性期病院で新たなキャリアを積むのはどうでしょうか。
内科医としてのキャリアがある医師なら、産業医として復職するという選択肢もあります。
臨床検査専門医という新しい分野
出産や子育てといったライフステージの変化によりキャリア転向を考える女性医師の選択肢のひとつとなるのが、臨床検査専門医です。
日本臨床検査医学会でも、第二のキャリアとして臨床検査医を検討する医師への相談窓口を準備しています。
手術や当直がなく、家庭と仕事の両立を目指しやすい復帰の形といえます。
女性医師が多数活躍しているので、復職を機に新しい分野も視野に入れてみるといいでしょう。
無理のない復職タイミングを
休職や離職の理由にもよりますが、復職をする際は無理のないタイミングを考慮しましょう。
体調不良によって休んでいるのであれば、主治医による仕事復帰の可否判断が必要になり、かつ復帰後のフォローアップも検討すべきです。
産後の復帰であれば家族のサポートが得られるかも、
重要になるでしょう。
「パートナーも医師として仕事をしているからサポートは難しい」という家庭もあるでしょうし、「我が子を保育園に預けてまで働きたくない」という気持ちが勝って仕事復帰が不安になるという方もいるでしょう。
医師という仕事は専門知識が必要なので、復職には大きなハードルを感じるかもしれません。
せっかく復職したのにすぐに退職となってはもったいないので、復職のタイミングをじっくり検討しましょう。
働きやすい復職先を探そう
あなたにとって「働きやすい復職先」とは、どのような条件の職場でしょうか。
離職の理由や今後の人生設計、家族の年齢や希望キャリアによって、働きやすい復職先は人それぞれです。
医師の勤務時間は長くなる傾向にありますので、無理のない働き方を選ばなくてはいけません。
「絶対に常勤医」「スポット勤務は嫌」と自分の中で選択肢を狭めず、柔軟な働き方ができる復職先を探していきましょう。