医師が転職で後悔する理由と成功させるためのポイントを解説

特別職である医師の転職において、慢性的な医師不足で買い手市場とも言われており、医師は転職先にほとんど困らないとされています。

ですが、全ての医師が満足な転職を実現しているとは限らず、「転職に失敗した」と感じてしまう人も多いです。

本記事では、医師が転職に後悔する理由と転職を成功に繋げるためのポイントを解説します。

ワーク・ライフ・バランスや年収アップ、キャリアアップなどを考えて転職したものの、転職に失敗して生活や今後のキャリアに大きな悪影響を与える恐れもあるのです。

この記事を参考に、転職活動に役立てていただけたら幸いです。

医師の転職回数が多い理由

医師の転職回数の目安は、平均4～5回程度と言われており、その背景には超高齢社会や少子化による慢性的な医師不足があります。

医師が転職を希望し、退職したとしても、全国的に医師不足の現状では、同じ職種での再就職先に困ることはほとんどありません。

そのため、自分のキャリアアップや給料、待遇面を改善させるために転職を繰り返す医師も多くいます。

転職回数が多いことのリスク

一般的に、転職回数が多ければ、面接の際に不利に働くことが多いですが、医師の場合は先述した理由から、転職回数が多いからといって、それほど不利にはなりません。

ただし、以下のリスクがあるので慎重に考えましょう。

• これまで積み上げてきたキャリアを失う
• 学び直す必要がある
• 転職を繰り返すと退職金が減る恐れがある

退職金は同じ勤務先で長期間働くほど高額になる傾向にありますが、転職を繰り返すと退職金の計算上不利になってしまいます。

医師は他の職種に転職できるのか

医師が他の業種に転職をしても問題ありません。

実際、医師が医療機関以外の職種で働く事例は増えており、想像以上にハードであり、命を扱う仕事だからこそ、他の職種に転職したいと思う人が多いのも事実です。

医師免許や医師としての経験を活かして働ける職種には以下のものがあります。

• 製薬会社・医療機器会社
• 介護老人保健施設
• 産業医
• 保険会社の社医
• 公務員（医療技官、矯正医官、公衆衛生医師など）
• 開発・研究職
• ベンチャー企業・コンサルタント会社

医師の仕事と他業種では、価値観が異なる場合があるため、慎重に検討しましょう。

医師の転職で後悔しがちなこと

医師は転職市場で有利であるのは確かですが、他の医療機関に転職したものの「失敗した」と後悔する医師は少なくありません。

医師が転職に「失敗した」と感じる主なポイントをご紹介します。

• 想像以上にハードだった
• 勤務条件が聞いていた話と違う
• 年収が下がる
• 人間関係に悩む
• スキルアップができない
• 知人に紹介してもらったため辞めづらい

これまで働いていた医療機関に、何らかの不満を感じて転職を行ったにも関わらず、想定したものと違う結果になる可能性が大いにあるのです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

転職の後悔①想像以上にハードだった

収入アップを目指して、向上条件の医療機関に転職したものの、想定以上にハードワークになってしまったということはよくあります。

その結果、ライフ・ワーク・バランスが保てず、精神面や健康面で不満を持ち、短期間でやめてしまうケースも少なくありません。

求人情報では、収入面などの他の医療機関と比較してプラスの材料は積極的に載せても、マイナスの材料はあまり知らせないため、実際の労働環境がどのようになっているか、分かりづらくなっています。

そのため、給料が相場よりも大幅に高い場合、激務になる可能性を考慮しなければなりません。

転職の後悔②勤務条件が聞いていた話と違う

求人情報でチェックした勤務条件と実際の勤務内容が異なる場合もあります。

たとえば、「当直回数が多い」「休日が希望の曜日ではない」「残業時間が長い」など、聞いていた内容と違っていてもなかなか指摘できず、不満を持ちながらも働いてしまう医師は意外と多いです。

面接時に口頭で確認するのはもちろん大事ですが、契約書など書面に残していなければ、上記のような失敗は起こりやすくなります。

転職の後悔③年収が下がった

勤務地やライフワークバランスを重視するあまり、年収が下がってしまったという失敗も多くあります。

収入面に納得して就職したのなら問題ありませんが、よく確認せずに転職してしまうと、後悔するでしょう。

医療機関によって金額や手当の有無が異なるだけでなく、求人情報への記載の仕方も異なるため、提示された額が手当込みの金額であったり、固定残業代（あらかじめ時間外労働時間を決めておき、毎月定額で支払う残業代）を導入していたりする場合もあります。

そのため、給料の内訳をしっかりチェックしていなければ、このような失敗に陥りやすいです。

転職の後悔④人間関係に悩む

医療関係であっても、他の職場と変わらず人間関係での悩みは多く、転職先の医局内で派閥争いに巻き込まれたり、上下関係に悩んだりするケースは珍しくないでしょう。

人間関係で悩んで転職したものの、改善されなければ意味がありません。

医療チームとして連携し、診療をスムーズに行うためには、医師同士や看護師、薬剤師、放射線技師や臨床検査技師など、様々な医療スタッフとのコミュニケーションが必要不可欠です。

しかし、転職先での人間関係が合わなければ診療にも悪影響が出る恐れがあります。

転職の後悔⑤スキルアップができない

特定の分野へのスキルアップを目指して転職したものの、転職先では目指すスキルとは関係ない業務を任される場合もあります。

自分が担当したい業務の設備環境や症例が揃っていても、それを担当できるかは別問題です。

事前にどのような業務を任せてもらえるか確認しておかなければ、スキルアップが見込めず、仕事へのモチベーションが下がってしまう可能性が高くなります。

転職の後悔⑥知人に紹介してもらったため辞めづらい

知人に紹介してもらい他の医療機関に転職するパターンも多くあります。

ですが、知人からの紹介だからといって、待遇面が良くなるとは限りませんし、職場環境が自分に合っているかも分かりません。

転職先の実態が想定とは違っていると感じても、知人の面目を立てる必要があるため、辞めるに辞められない状況に陥る可能性もあるので、注意しなければなりません。

医師が転職を後悔する理由

一般的に、転職の回数が多ければ就職に不利になる可能性がありますが、医師の場合は先述した通り一部の都心部を除いて慢性的に人材が不足しており、転職回数が多いからといって、面接の際に悪い印象を持たれることはほとんどありません。

そのため、他の職業と比べて転職回数が比較的多いと言われていますが、上記のように転職に失敗したと感じるケースも非常に多いです。

では、なぜこのような事態に陥ってしまうのでしょうか。

ここでは、医師が転職に後悔する主な理由をご説明します。

自己分析不足

転職前には、「なぜ転職したいのか」「自分には何が向いているのか」「転職先でどのような働き方をしたいのか」などの自己分析をして転職先を探します。

ですが、自己分析が疎かだと入職後に仕事内容や待遇面に不満を持ち、後悔するリスクが高くなるでしょう。

後ほど詳しくご説明しますが、しっかり自己分析を行い、転職理由や希望条件を明確にした方が自分に合う条件の職場を見つけやすくなるのです。

情報収集不足

医師の転職活動で後悔しやすい理由の多くは転職先の情報収集不足です。

求人情報には実際の労働環境や人間関係、医療設備などは詳しく記載されていないため、情報収集が不十分のまま就職して、ストレスや不満を感じる医師は少なくありません。

そのため、求人情報だけを見てすぐに転職を決断してしまうと失敗しやすいです。

転職への焦り

現職に不満を持っており、「一刻も早く転職したい」「今の職場でなければどこでも良い」という理由ですぐに転職してしまうと、自分にとって良くない条件の転職先を選んでしまう場合があります。

いくら現職に不満を持ち焦っていたとしても、転職活動は慎重に行わなければ後悔するリスクが高いです。

高待遇の職場に就職したいのであれば、たとえ時間がかかっても現職と比較しながらベストな選択をしなければなりません。

医師が転職を後悔しないためのポイント

医師が転職で後悔しないために、押さえておくべきポイントをご紹介します。

求人情報だけで判断するのではなく、要点を押さえながら慎重に転職先を選びましょう。

転職における希望条件を明確にする

転職活動を成功させるには、まず自己分析を入念に行い、希望条件や目指す将来像を明確に設定することが重要です。

転職によって目の前の不満は改善されるかもしれませんが、自分が何を目指してどうなりたいのかを明らかにしなければ、転職先でも新たな不満を抱えることになります。

5年、10年と働くのを想定し、様々な角度から自己分析したうえで転職活動を進めていきましょう。

転職先へ求めるものに優先順位をつけるのも有効です。

契約書の記載内容を細部までチェックする

転職先で実際に働く際には基本的に雇用契約書を交わしますが、細部まで確認しなければ、「聞いていた話と違う」と後に後悔するリスクが高くなります。

口約束では実際に守られるか分からないため、必ず採用条件を書面でしっかり確認し、合意したうえで契約しましょう。

徹底した情報収集を行う

転職の後悔は、情報収集不足や確認不足によって起こりやすくなります。

そのため、転職希望先の情報収集は徹底的に行いましょう。

情報収集で活用できるものとしては、求人情報はもちろん、医療機関のホームページやインターネットの口コミ、国や県が運営するドクターバンクからの情報など様々あるので、これらをくまなくチェックし、詳細を把握することが重要です。

【医療機関の転職でチェックしておくと良いもの】

• 報酬・待遇（相場と比較してどうか）
• 諸手当（学会補助、通勤手当、住宅補助等の範囲）
• 福利厚生（雇用保険、育児・介護支援の有無）
• 勤務内容（自身の条件、全体の状況）
• 人員体制（自身の仕事への影響はどうか）
• 症例数（自身が担当できる数の予測）
• 将来性・方針（医師不足の懸念、施設の将来性など）

また、転職に伴い転居が必要となる場合は、住む地域に関する情報も調べておくのがおすすめです。

院内見学を行う

転職先を検討する際に欠かせないのは、病院見学です。

面接時に行われるケースが多いため、自分で働きたい職場であるか確認するためにも以下の要点を押さえましょう。

• 外来（雰囲気や患者層）
• 病棟（人員や運営体制、施設・設備）
• 医局（上司や同僚の人柄、雰囲気）
• 施設・設備（設備・導入機器、保育所など）

院内見学をしっかり行えば、想定していたものと実際のギャップがそれほど大きくならずに済みます。

また、病院見学だけでは判断できないという方や、未経験の分野に挑戦したい方は、「トライアル勤務」や「定期非常勤」として働いてみるのも有効です。

転職コンサルタントを活用する

転職活動を進めるにおいて、全て自分の力で行う場合、時間や労力がかかり、特に現職がハードワークだと、転職先の情報収集になかなか時間を割けないというケースもあるでしょう。

このように、1人での転職活動が難しいと感じる方は、医療業界に精通している転職支援サービスを活用するのも有効です。

転職支援サービスを利用すると、転職支援サービスのプロが、医師の希望条件についてヒアリングし、その希望に合った医療機関を紹介してくれます。

実績豊富なコンサルタントを選べば、知識やノウハウを活かし、自分の希望に合った条件や職場環境の職場を探すうえで大いに役立ちますし、面接対策や条件交渉などのバックアップ体制が整っているところもあるため、転職活動に不安を抱えている方は、積極的に利用してみるのがおすすめです。

複数の転職先候補を比較する

複数の求人を比較することも重要なポイントです。

他の職種に比べて転職に有利な医師という職業ですが、条件をよく確認しなければ自分に合わないと後悔するリスクがあります。

また、同じ案件でも勤務条件などが違う場合もあるので、複数の転職先の候補を挙げ、それぞれ比較しながら自分にとってベストだと思う選択肢を第1候補としましょう。

転職サイトを利用する場合、サイトによって非公開求人が異なるため、複数の転職サイトをチェックしておくのが望ましいです。

転職スケジュールに余裕を持つ

お気付きかと思いますが、自身に適した医療現場で働くためには自己分析や転職先の情報収集などやるべきことは多岐にわたります。

焦って転職を決めてしまうと後悔するリスクが高いため、転職活動は必ずスケジュールにゆとりをもって行いましょう。

好条件の職場に転職できるかはタイミングも大事なので、仕事を辞めてから次の就職先を探すのではなく、在職中から転職活動をコツコツ行い、次の職場が決まってから今の職場に転職の意思を伝えるのがおすすめです。

自己分析と情報収集を行い転職を成功させよう

医師の転職活動において、求人情報と実際の職場環境や待遇面に差異が生じる可能性が高く、転職後に「失敗した」と後悔する医師は少なくありません。

医師が転職活動を成功させるためには、入念な自己分析による自身の転職する目的を明確化すること、そして転職先の情報収集が不可欠です。

今回ご紹介したポイントを押さえ、自身の希望に合った転職先を探しましょう。