医師の生涯年収はいくら?勤務医・開業医の違いと生涯年収を上げる方法

医師の年収は、年齢や勤務先、勤務医なのか開業医なのか、診療科の違いなどにより異なります。

どのような条件で医師としての年収が上がり、生涯年収をアップさせられるのでしょうか。

また高収入であるといわれている医師ですが、「医師は儲からない」という意見もあります。

なぜ医師は儲からないといわれているのか、医師として年収を上げるにはどのような方法があるのかをお伝えします。

医師の生涯年収とは

病院勤務医の年収が1,479万円だとすると、26歳~65歳の40年勤務で生涯年収は5億9160万円で、
おおよそ6億円が生涯年収となります。
(参考:厚生労働省「勤務医の給料と開業医の収支差額について」

しかしこれはあくまでも勤務医の場合なので、開業医となり仮に75歳まで働けば生涯年収は増加します。

一般的な大学・大学院卒の退職金を含めない生涯年収は、約2億6千万円となっていますので、他の職種と比較すると医師の収入は、数倍になるとわかります。
(参考: 生涯賃金など生涯に関する指標|ユースフル労働統計 2022

このように実際の医師の生涯年収は、勤務先や開業の時期、診療科といった多様な条件により異なります。

開業医と勤務医の生涯年収

開業医と勤務医の生涯年収

病院の勤務医であると給与を受け取りますが、個人開業医となると収支差額が収入となります。

月額給与年収
病院勤務医123万円1,479万円
開業医(法人等)211万円2,530万円
開業医(個人)205万円2,458万円

参考:厚生労働省「勤務医の給料と開業医の収支差額について」

このようなデータから、開業医は勤務医の約1,7倍の収入があるとわかります。

勤務医から何歳頃に開業をするのか、開業医として何年働くか、が、生涯年収に影響するといえるでしょう。

30代で開業した場合の生涯年収

勤務医として10年働き、36歳で開業医になって75歳まで働く場合を例に考えてみましょう。

勤務医の10年で約1億5千万円、開業医の40年間で約10億円の収入があるとすると、生涯年収は約11億5千万円となります。

30代前半の勤務医の年収は抑えられていますので、上記の数字には誤差があるかもしれませんが、この時期に開業医となれば同年代の医師よりも年収が高くなると考えられるでしょう。

開業するためには医師としてのスキルだけでなく、開業資金の準備や経営者としての能力も必要になります。

40代で開業した場合の生涯年収

勤務医として20年働き、46歳で開業医になって75歳まで働く場合の生涯年収について考えてみましょう。

勤務医の20年で約3億円、開業医の30年で約7億3千万円の収入があるとすると、生涯年収は約10億3千万円となります。

40代は医師としての経験やスキルが充実し、組織内では管理者としての役割も担う年齢です。

開業資金の融資を受けるという意味でも信頼が得られる年代なので、40代の開業を目標にしている人もいるでしょう。

社会法人日本医師会の「新規開業の場合の開業後年数別開業年齢」から逆算すると、
40歳前後で開業医となる医師が多いようです。

50代で開業した場合の生涯年収

勤務医として30年働き、56歳で開業医になって75歳まで働く場合の生涯年収について考えてみましょう。

勤務医の30年で約4億4千万円、開業医の20年で約5億円の収入があるとすると、生涯年収は約9億9千万円となります。

一般的に開業の際に受けた融資は、10年~20年で返済していきます。

医師としての実績やスキルは申し分ない年齢ではありますが、開業のために融資を受ける年齢としてはリスクがあるかもしれません。

診療科ごとの医師の年収の違い

診療科年収

診療科によっても年収に違いがあります。

こちらのデータを参考に、診療科ごとの年収を比較してみましょう。

診療科平均年収生涯年収
(40年勤務の場合)
脳神経外科1,480万3,000円5億9212万円
産科・婦人科1,466万3,000円5億8652万円
外科1,374万2,000円5億4968万円
麻酔科1,335万2,000円5億3408万円
整形外科1,289万9,000円5億1596万円
呼吸・消化器・循環器科1,267万2,000円5億688万円
内科1,247万4,000円4億2474万円
精神科1,230万2,000円4億2302万円
小児科1,220万5,000円4億8820万円
救急科1,215万3,000円4億8612万円
その他1,171万5,000円4億6860万円
放射線科1,103万3,000円4億4132万円
眼科・耳鼻・泌尿器・皮膚科1,078万7,000円4億3148万円

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

※40年勤務した場合の生涯年収は、「平均年収×40年」で算出

平均年収が高額となる脳神経外科と、眼科・耳鼻・泌尿器・皮膚科の平均年収を比較すると、400万円程度の差があります。

生涯年収となるとさらに大きな差となり、診療科の違いで医師の収入が異なるとわかります。

脳神経外科は労働時間が比較的長く、高度な技術が必要となり専門スキルが求められます。

産科・婦人科は、妊婦と胎児の命を預かる責任があり、オンコールや当直回数の多さが収入の高さに反映されていると考えられます。

医師の年収が高額になる理由

他の職業と比較すると、医師の年収は高額になる傾向があります。

大学の医学部で6年間勉強し、その後は医師国家資格に合格しなければなりませんし、そこから研修医を経験する必要があります。

高度な専門知識が必要な医師なので年収が高額になるのは当然といえば当然かもしれませんが、他にも理由があります。

なぜ医師の年収は、高額になるのでしょうか。

需要と供給のバランス

医師年収高い理由

人は誰しも最善の医療を平等に受ける権利があります。

生まれながらに持病がある人はもちろん、誰しも怪我や風邪をひきますので、多くの人が病院を必要としています。

日本は高齢化社会なので、今後はますます医師の需要が高くなっていくと予想されます。

人口が減少していくと予想すると、医師不足が深刻化していくという懸念もあります。

また、医師は病気の治療だけでなく、健康を維持する、美容を維持するという役割もあります。

患者さまの命を預かる責任

医師は患者さまの命を預かる責任ある仕事です。

患者さまの症状の診断や症状により投与する薬、治療方針といった治療に関する全てにおいて医師が判断をしています。

看護師は医師の指示がなくては動けないので、常に責任のある立場であるといえます。

時には患者さまの死を受け止めなければならない場合もあり、精神的なストレスは計り知れません。

患者さまが回復し笑顔が見られるという喜びもありますが、常に人の命を預かるという尊い役割の見返りに高額な報酬が設定されていると考えられます。

24時間体制の激務

医師激務

医師は需要が高い仕事ですが、24時間体制で対応が求められる激務でもあります。

勤務時間が決まってはいるものの、患者さまの容体の急変や急患によっては対応を余儀なくされます。

医師の中には残業時間が多くなり、過労死ラインと呼ばれる一定時間を超えるほどの勤務をしている人もいます。

人手不足は慢性化しており、不規則な生活を送っている医師は少なくありません。

医師が儲からないといわれる理由

年収が高額であるといわれる医師ですが、あまり実感がないという人も多いかもしれません。

勤務環境が過酷な仕事のため、「高収入だとしても割に合わない」と感じている医師もいるようです。

医師が儲からないといわれるのには、以下のような理由があります。

年収が高いため税金も高額

医師のように収入が高額な場合は、支払わなければならない所得税も高額になります。

所得税は収入金額に応じて比率が決まっていて、
「900万円を超え、1800万円以下」という水準では所得税は33%、「1800万円を超え、4000万円以下」は所得税は40%となります。

せっかく収入が増えても所得税だけでなく、住民税や社会保険料などもかかります。

書面上では高収入であっても、その分引かれる金額が大きく、手取りは期待よりも少なくなってしまいます。

ただし開業医となると自身で確定申告を行いますので、経費を計上して所得を下げると、課税所得金額を下げられます。

開業医は退職金がない

開業医退職金

勤務医であれば退職金がもらえますが、開業医となった場合は退職金がありません

開業医は勤務医よりも収入が高く、早く開業した方が生涯年収が増えるとお伝えしましたが、退職金の有無についてもよく検討すべきといえます。

さらに開業医はクリニック開業の際の融資の返済だけでなく、老朽化のための建て替えや設備投資にもお金がかかっています。

医師が高収入だとはいえ、ある日突然老後の費用を用意できるわけではありませんので、リタイア後の生活資金を計画しておかなければいけません。

開業医は厚生年金がない

勤務医であれば厚生年金にも加入していますが、個人事業主となる開業医は厚生年金に加入していません

開業医となると国民年金のみの加入となりますので、
早い段階から老後資金について考えておく必要があります。

医師に限らずですが高所得者は生活水準も高く、毎月の生活費も高額になる傾向があります。

退職金も厚生年金もない開業医は、高収入であったとしても、自力で将来の備えが必要です。

激務の対価として割が合わない

医師は24時間の勤務体制でありつつ、その業務は患者さまの命を預かるという責任の伴うものです。

いくら収入に反映されているとはいえ、割に合わないと感じている人もいます。

医師に限らずですが、働く理由はお金だけではありません。

「自分自身を成長させたい」「社会の役に立ちたい」「生きがいを感じたい」というように、報酬以外の目的を誰しもが持っているはずです。

どんなに高収入であっても、お金だけでは激務の対価とはならない可能性があります。

医師が生涯年収を上げる方法

医師が生涯年収を上げるには、どのような方法があるのでしょうか。

節税や投資という意見もありますが、ここでは
医師として生涯年収を上げる方法を考えてみましょう。

開業医になる

医師年収を上げる

先述した通り、開業医は勤務医よりも年収が高くなる傾向があり、生涯年収も高額になると見込めます。

ただし開業には医師としてのスキルや経営力、人材や費用といった多くの準備が必要となります。

新規開業なのか、診療科は、立地や地域病院との連携といった要素も影響するでしょう。

開業医になれば必ずしも年収が上がるというわけではありませんので、丁寧に準備していきましょう。

転職する

一般的な職業であれば都市部の方が年収が高い傾向にありますが、医師は地方部の方が年収が高くなる場合があります。

地方の方が医師が不足していますので、医師獲得のため条件の良い求人がみつかるかもしれません。

また勤務先の経営形態が、国立なのか医療法人というような違いによっても収入に差がある場合もあります。

アルバイトや副業をする

医師としてアルバイトをするのは、珍しいことではありません。

副業やスポット案件を探す、非常勤の掛け持ちをする、という働き方があります。

医療機関のアルバイトでは、時給1万円~が相場となります。

収入がアップするだけでなく、常勤先と異なる医療を経験できるという自身のスキルアップのチャンスとなるというメリットもあります。

専門的な資格を取得する

専門医を取得している、資格を必要とする手術や内視鏡ができる、という強みがあれば、収入アップの交渉材料となります。

転職をしたいと行動する際には力強い武器となりますし、開業の際にも患者さまからの信頼に繋がります。

高齢化社会という背景もあり、認知症に対応できる精神科医でありながら内科疾患も診られる、リハビリ専門医を持っている、というような医師は需要が高くなると考えられます。

医師の生涯年収を上げる方法はある

医師は他の職業と比較すると、年収が高額な傾向にありますが、その生涯年収は人それぞれです。

診療科や病院の地域、開業するかしないか、というように、医師としてどのようなキャリアを積んでいくかで生涯年収は異なります。

医師として年収をアップさせる方法はいくつかありますので、自身に合う方法を選んでキャリアアップを目指していきましょう。