個人事業主と会社設立の違いとは?それぞれのメリット・デメリットについても解説

  個人事業主と会社設立の違いについて知りたいと悩んでいませんか? この記事では「個人事業主と会社設立の違い」について紹介していきます。 他にも「個人事業主のメリット・デメリット」や「会社設立のメリット・デメリット」についても解説していきます。 ぜひこの記事を参考にして、個人事業主と会社設立の違いについて理解を深めてください。

個人事業主と会社設立の違いとは?

ビジネスを始める際には、多くの人は最初に個人事業主としてスタートし、ビジネスが安定してきたら会社を設立するというケースが多いです 会社設立には時間と費用がかかってしまうので、初期段階では個人事業主として始めるほうが手軽といえます。 具体的に、個人事業主と会社設立の違いについては、以下のとおりです。  
項目 個人事業主 会社設立
費用 0円 法定費用に加え、資本金が必要。株式会社では約25万円〜、合同会社では約10万円〜
手続き 税務署に開業届を提出するのみ。青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も必要 法人登記が必要で、会社設立に必要な書類や会社の印鑑も用意する
税金 所得税、個人住民税、消費税、個人事業税。所得税は利益が多いほど税率が上がり、控除が少なくなる 法人税、法人住民税、法人事業税、消費税など。法人税は所得税よりも税率が穏やかで、赤字でも法人住民税がかかる
社会的信用度 法人に比べると低いが、事業運営に大きな支障はない 信用度が高く、新規契約や融資に有利
申告 個人の確定申告 法人決算書の作成と申告が必要で、税理士の助けが必要なことが多い
社会保険 事業者負担なし(5人未満の場合) 会社負担あり
それぞれの項目について解説していきます。

費用

個人事業主は0円で開業できますが、会社を設立する場合には少なくとも約10万円の費用が必要です。 会社設立に必要な約10万円は最低限の費用であり、実際には追加の資本金を準備する必要もあります 資本金は1円からでも登記可能ですが、あまりに少額だと信用度が低くなってしまうので、注意しましょう。 このように、初期費用の面では個人事業主の方がメリットがあるといえるでしょう。  

手続き

個人事業主の開業に際しては、所管の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで手続きが完了させることができます。 開業届は国税庁のウェブサイトからダウンロード可能で、自分で記入して税務署に直接持ち込むか、郵送で提出することができます。 また、e-Taxを利用してオンラインでの提出も可能です。 会社設立の手続きについては、個人事業主に比べて複雑で、法人登記が必要だったり、定款の作成や会社の実印の用意などが求められます

税金

個人事業主と会社設立の税金比較については、以下のとおりです。  
項目 個人事業主 会社設立
所得税 累進課税(最大45%) 法人税(最高23.2%)
住民税 個人住民税 法人住民税
消費税 適用 適用
事業税 個人事業主 法人事業税
上記のように、税金の種類も個人事業主と会社設立によって異なります。 個人事業主は所得税が課され、収入が低ければ税率は5%からスタートしますが、収入が増えると最大で45%まで税金を支払う必要があります 会社設立では法人税が課され、最大税率は23.2%になるので、収入が増えると法人化することで税金の負担を軽減させることが可能です。 また、会社設立は赤字でも一定の法人住民税を支払う義務がありますが、個人事業主は赤字であれば所得税や住民税の支払いが免除されます。  

社会的信用度

会社を設立すると、企業としての信頼性が高まり、法人を相手にしか契約しないような取引先ともスムーズにビジネスを進めることが可能です。 一方で、個人事業主としてのビジネスは比較的簡単に始められますが、信用の面で劣ることがあり、取引を拒否されてしまうケースがあるのも事実です。 事業の成長を見据えるならば、法人化する方が、より多くの機会を得やすいといえます しかし、業界や職種によっては、個人事業主としての活動が必ずしも不利になるというわけではなく、フリーランスの需要が高い分野では、個人事業主であることがメリットになる場合もあります。

申告

個人事業主の場合は、事業運営のために実際に支出した費用のみが経費として認められますが、事業主自身の給与や賞与は経費として計上することはできません。 事業にかかる費用が収入に対して過大であると、税務調査の対象となる可能性があるので注意が必要です。 会社設立では、個人事業主が認められる経費に加えて、従業員への支払いなどもすべて経費に含めることができます また、法人契約の生命保険料も、契約内容により全額経費として計上できるので、節税効果が高まります。 個人事業主と会社設立のいずれの場合でも、正確な経費の記録と報告が必要になり、不正確な経費計上は、税務調査の対象となるだけでなく、事業運営にも悪影響を及ぼしてしまいます。

社会保険

個人事業主では、一般的には国民年金と国民健康保険に加入することが求められます。 これに対して、会社設立では、社長が1人で運営していたとしても厚生年金と健康保険に加入する必要があります また、個人事業者が特定の業種で従業員を5人以上雇用する場合に限り、厚生年金や健康保険への加入義務が生じます。

個人事業主のメリット

個人事業主のメリットについては、以下があります。
  • 手軽にスタートできる
  • 会計業務の負担が少ない
  • 利益が少ないと税負担も少ない
それぞれのメリットについて解説していきます。

手軽にスタートできる

個人事業主としてのメリットは、低コストで手軽にビジネスを始められることです。 会社を設立する場合には、登記申請が必要ですが、個人事業主の場合だと、開業届を役所に提出するだけで、すぐに営業を開始できます。 また、この手続きには特別な費用もかからないため、予算に余裕がない方にとって魅力的な選択肢です

会計業務の負担が少ない

個人事業主は、会社設立とは異なり、会計処理に関する規則がそれほど厳しくないので、会計業務の負担も比較的軽くなります。 最近では優れた会計ソフトが多くあるので、個人事業主でも簡単に会計を管理することも可能です 会計業務の負担が大きいと、事業運営に必要なリソースが不足してしまうリスクがあるので、まずは個人事業主としてスタートし、徐々に経営管理に慣れていくのもおすすめです。  

利益が少ないと税負担も少ない

個人事業主が支払う税金は主に所得税になるので、利益が少ない場合には税負担も軽くなるメリットが挙げられます。 また、赤字経営となった場合でも、会社設立とは異なり、個人事業主は所得税や個人住民税が免除されることがあります このように、赤字でも一定の税負担が求められる会社設立と比べて、税金面での優位性が高いといえます。  

個人事業主のデメリット

個人事業主のデメリットについては、以下があります。
  • 社会的信用度が低い
  • 責任はすべて自分自身
  • 利益が増えると税負担が多くなる
それぞれのデメリットについて解説していきます。

社会的信用度が低い

個人事業主は、社会的信用が会社設立に比べて低く見られてしまうデメリットが挙げられます。 実際に、個人事業主には登記や会計資料の公開義務がないので、透明性が低く、信頼を得にくいのも事実です 一部の企業は、実績に関わらず個人事業主との取引を避ける傾向があります。 また、求職者の多くは、安定した雇用と社会保険を重視していることが多いので、個人事業主として従業員を雇用する際には、優秀な人材を確保するのは難しいというデメリットも挙げられます。 社会的信用がビジネスの成功に直結する場合や、将来的に取引先を増やし、優秀な人材を確保したいと考えている場合には、法人化を検討するのが賢明といえます。  

責任はすべて自分自身

個人事業主は、事業活動から生じたすべての債務は事業主自身が負担することになります。万が一、借金の返済が滞ってしまうと、個人の財産が差し押さえられる危険や、最悪の場合、自己破産に至ることも考えられます。 事業が失敗した際のリスクは非常に高いので、個人事業主としてビジネスを展開する際には、事業保険に加入するなど、あらゆる事態に備える対策が重要です  

利益が増えると税負担が多くなる

個人事業主にかかる所得税は、所得が増えるにつれて税率が高くなる仕組みになっているので、利益が増加すると税負担も多くなるデメリットがあります。 具体的には、所得税は累進課税制度を採用しており、所得が増加するに従って税率が段階的に上がっていきます 一般的に、年間の利益が500万円を超えると、法人化した方が税制上のメリットを享受しやすいとされています。 そのため、最初は個人事業主として始め、利益が増えてきたタイミングで会社を設立することをおすすめします。

会社設立のメリット

会社設立のメリットについては、以下があります。
  • 社会的信用度が高い
  • 税金面で有利になる
  • 資金調達がしやすくなる
  • 事業承継しやすい
それぞれのメリットについて解説していきます。

社会的信用度が高い

会社設立の大きなメリットとして、社会的信用度が高いことが挙げられます。 会社を設立すると、商号や所在地、資本金などの情報が公式に登記され、法務局を通じて誰でも閲覧できるようになるので、対外的な信用力が高まることが期待できます。 実際に、多くの企業は、個人事業主よりも法人の方が信頼できると考える傾向があります また、求職者の側から見ても、個人事業主よりも会社に安定的な雇用を求める傾向が強いです。 このように、ビジネスの信頼性や優秀な人材を確保するためにも、法人化は有利に働くことがあります。

税金面で有利になる

会社設立は、個人事業主に比べて、税金面で有利になります。 会社を設立すると、給与を役員報酬として受け取ることが可能だったり、経費として役員報酬を計上できるだけでなく、給与所得控除も適用されるので、節税の幅が広がります 経費の範囲も、個人事業主に比べて、会社では事業経費として計上しやすく、自宅兼事務所や自動車、生命保険料なども経費として認められる可能性が高くなります。 そのため、法人化した方が経費として計上できる項目が増え、結果的に節税効果が期待できます。  

資金調達がしやすくなる

会社設立は、社会的信用度が高くなるので、資金を調達する際に大きな利点となります。 個人事業主の場合だと、金融機関によっては融資の際に第三者保証人が必要とされることがありますが、会社設立の場合だと第三者保証人が不要になるケースが多いです 具体的には、損益計算書と貸借対照表の提出が求められ、金融機関は融資判断をおこないます。  

事業承継しやすい

会社設立のメリットとして、スムーズな事業承継が可能であることが挙げられます。 個人事業主の場合、事業主が不幸にも亡くなった際には、その人名義の預金口座が一時的に凍結されるため、事業資金へのアクセスが困難になり、事業活動が停止するリスクがあります。 一方、法人格を持つ会社の場合、代表者が死亡したとしても会社の銀行口座はそのまま維持されるので、事業運営に対する支障が少なく、スムーズに継続できます このように、会社設立は事業を止めることなく継続でき、将来的な事業の引き継ぎを円滑にすることができるメリットがあります。  

会社設立のデメリット

会社設立のデメリットについては、以下があります。
  • コストがかかる
  • 社会保険加入が義務になる
それぞれのデメリットについて解説していきます。

コストがかかる

会社設立では、個人事業主に比べて手続きや費用が大幅に増えてしまうデメリットが挙げられます。 個人事業主の場合だと、開業届を提出するだけで比較的簡単に事業を始められますが、会社を設立するには、まず定款の作成と登記の申請が必要です。 例えば、株式会社の場合、設立にかかる費用は高額になり、定款認証費用や登録免許税だけで約20万円が必要です また、設立から実際に業務を開始するまでの手続きに2~4週間の期間が必要になるのが一般的です。 さらに、事業が赤字であっても、法人住民税の均等割りとして最低でも約7万円を支払う必要があります。 このように、会社設立とその後の維持には、時間と費用がかかることを考慮し、計画的に準備を進めることが重要です。  

社会保険加入が義務になる

会社を設立すると、社員が自分ひとりだけであっても、健康保険と厚生年金保険に加入する義務が生じます。 社会保険は、国民健康保険や国民年金と比較すると、保険料が高額であり、個人事業主として活動するよりも費用負担が大きくなります これから従業員を雇う場合には、社会保険料の支出を予めシミュレーションし、どの程度の負担になるかを把握しておくことをおすすめします。  

自分に合ったスタイルを選ぼう!

今回は、個人事業主と会社設立の違いや個人事業主と会社設立のメリット・デメリットを紹介しました。 個人事業主とは、個人が独自にビジネスを運営する形態を指し、会社を設立する場合は、個人とは別に法人という独立した存在を設け、その法人を通じて事業を展開していきます。 同じようなビジネス活動であっても、個人事業主と会社設立では、その取り扱いや税制、法律面での規定が大きく異なることを理解しておくことが重要です 今回の記事を参考にして、自分に合ったビジネススタイルを選びましょう。  
 

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